水道管凍結防止帯を使ったヨーグルトメーカの製作

ヨーグルトメーカを使えば、市販の牛乳とヨーグルトを材料にして、自家製ヨーグルトが作れる。でも、安いものはタイマーすら付いていないし、マイコン制御のものだと9千円から1万数千円もする。そこで、タイマーと温度設定機能が付いたヨーグルトメーカを自作してみることにした。

一番大事な熱源だが、色々考えたあげく結局、冬場の凍結を防止するために水道管に巻きつけて使う、水道管凍結防止帯を利用することにした。この水道管凍結防止帯は、屋外で使用され、多少は雨滴がかかったり、結露もあり、土中に埋める場合もある。このような、使用環境に耐えるヘビーデューティーな物であることが採用した一番の理由である。

水道管凍結防止帯。シリコンゴムに電熱線が封入されている。長さ1m、消費電力15W、サーモスタットが付いていないタイプ。価格は1,210円。仕様には「空気中において200℃で長時間使用に耐えられる」と書いてある。牛乳パックの1辺は7cmなので3巻きはでききそうだ。

温度センサーは、LM35DZを使用。金属製の鉛筆キャップにエポキシ樹脂で封入。ケーブルは、オーディオ用2芯シールド線。

本体制御部。(操作手順)上面:液晶表示器、開始・停止ボタン(黄色)、設定ボタン(緑)、ロータリエンコーダによる調節つまみ。背面:AC100インレット、AC100Vアウトレット、センサー端子。側面:ブザー用小穴。ブザーは、ボタン操作時、加熱終了時、異常発生時に鳴る。

設定モード時の液晶画面。調節つまみを回すと、選択されている設定項目(設定温度または加熱時間)の値が増減する。上段:設定温度または加熱時間が点滅して、選択されている設定項目であることを示す。下段:現在の温度と加熱時間を表すバーグラフ。バーグラフの1桁は1時間を表す。

加熱モード時の液晶画面。薄緑色のバックライトが点灯する。上段:設定温度と残り時間。通電時のみ*マークを表示する。下段:現在の温度と残り時間を表すバーグラフ。バーグラフの一番右端の1桁が点滅する。

本体制御部の内部。サイズ90x140x45mmのABS樹脂製ケースを使用。マイコンとしてPIC18F14K50を使用。トライアック(双方向サイリスタ)のゲート電流をマイコンのソフトウェアでON/OFFすることにより、ヒータへ供給する電力を制御する。電源はトランス方式。スペースは一杯一杯。

本体制御部、温度センサー、水道管凍結防止帯(ヒータ)を接続した様子。

アルコール温度計を使って温度を校正した。さすがは、高精度IC温度センサー、1℃以下の誤差となった。

温度制御プログラムを調整している様子。最終的には1リットルの牛乳パックを使って行う。プログラムは、温度制御のほかに、ウォッチドッグタイマーによる異常監視、異常温度の監視、電圧低下など異常停止時のエラー表示、設定項目のEEPROMへの保存なども行う。

RS232C経由で温度制御の様子をパソコンからモニタできる。経過時間、現在温度、制御(ON/OFF)

熱負荷のない状態(空焚き)で、室温26℃から設定温度42℃に到達するまで6分かかった。オーバーシュートは見られない。

500mLのペットボトルの水を使った試験。25℃から加熱して約1時間で40℃になった。500mLの水を15℃上げるのに必要な熱量は7.5Kcalである。この熱量を電力量に換算すると、1Kcal≒1.13Whだから、8.7Whとなる。このヒータは15Wだから、計算上は約30分でこの温度になるはずである。ところが、実際は約2倍の時間がかかったという事は、大雑把に言って発熱量の半分は水以外のところに逃げていったことになる。断熱が足りないのか?

0.5mm厚アルミ板にアルミテープを使ってヒータを貼り付けた。

1Lの紙パックの水を温める試験。プチプチ(気泡緩衝材)を4重巻き。

加熱時間7時間、設定温度40℃、水温19℃から加熱開始。室温は20℃。2時間20分後に設定温度に到達。1Lの水を暖めるを21℃上げるのに必要な熱量は21Kcalである。この熱量を電力量に換算すると、1Kcal≒1.13Whだから、23.7Whとなる。このヒータは15Wだから、ロスがなければ約1時間35分で40℃になる計算。理想95分に対して160分かかったので、効率は95/160で約60%(約40%がロス)だ。前回の試験が約50%だったので、約10%効率が改善した。

建築用断熱材スタイロフォームIB(30mm厚)を使ったボックスを作って試験してみたみた。スタイロフォームIBの熱性能熱伝導率(平均温度20℃) 0.040 W/m・K0.034 kcal/m・h・℃ 一応、JIS規格の燃焼性試験では合格となっている。また、断熱材が燃えた火事という事例に当てはまるのはほとんどが硬質ウレタン系の断熱材で、スタイロフォームの場合は皆無に近いそうだ。それと、スタイロフォームには難燃材が添加され、燃焼カロリーも低く万一燃焼した場合も燃焼ガスは木材と同一で、硬質ウレタン系のようにシアンガスを発生しないということだ。

加熱時間7時間、設定温度40℃、水温18℃から加熱開始。室温は21℃。1時間40分後に設定温度に到達。前回まで使用していたプチプチ緩衝材よりかなり断熱性が向上した。加熱終了後は、1時間あたり2℃位の割合でゆっくりと下降した。

2011年12月03日